不眠症の治療や睡眠障害での不眠時によく用いられる睡眠薬としてデエビゴというものがあります。
当院でも多くの患者様が内服されている薬でもあり、処方頻度が一番高いと言ってもいいかもしれません。
その理由はデエビゴの効果の特徴にあります。
今回はデエビゴ錠について、その作用メカニズムやどういった症状の方に向いているのか詳しくお話します。
デエビゴ(レンボレキサント)とは
脳の覚醒を促進するオレキシンの受容体を阻害することで、脳を睡眠状態へ移行させ睡眠障害を改善する薬です。
比較的新しい薬で、依存性や危険な副作用が出にくいと言われています。
そのため、治療に取り入れやすい薬となっています。
また、入眠障害にも中途覚醒にも効果を発揮するため、不眠症の症状を広くカバーできる点もデエビゴが良く使われる理由です。
以下に、詳しく説明します。
デエビゴの作用と効果
デエビゴはオレキシン受容体拮抗薬に分類される薬です。
オレキシンとは、覚醒と睡眠を調節する神経伝達物質のひとつで、オレキシンが自身の受容体(オレキシン受容体)へ作用すると覚醒システムを活性化させ覚醒が維持されます。
この覚醒システムが過剰に働いている状態では、不眠などの症状を引き起こしやすくなります。
逆に、この覚醒システムの働きを抑えることができれば、脳を覚醒状態から睡眠状態へ促すことができます。
デエビゴは、オレキシン受容体へ阻害作用をあらわすことで、過剰に働いている覚醒システムを抑制し、脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行させます。
それにより、不眠症を改善する効果が期待できるお薬です。
また、服用開始から比較的早期に睡眠改善が期待できるとされています。
さらに、睡眠薬を急に中断した場合に以前より強い不眠が出現する反跳性不眠への懸念が少ないなどのメリットが考えられるとされています。
作用時間
デエビゴを服用すると、有効成分であるレンボレキサントが体内に吸収されます。
薬を飲んでから、2.5mgの場合は1.5時間(1.0~4.0時間)、2.5mgの場合は1.5時間(0.5~6.0時間)経過すると、最高血中濃度に到達します。
一方、半減期の平均値は、デエビゴ2.5mgでは50.6時間、デエビゴ10mgでは47.4時間と報告されています。
この数字だけを見るととても長い間作用するように感じますが、服用してから8時間程度でレンボレキサントの血液中の濃度は、最高血中濃度の25%程度まで減少します。
また、朝になると内因性のオレキシンが増えてくるため、日中の活動に影響が少ないと考えられています。
副作用
デエビゴの副作用として多いのは、朝方の眠気、傾眠、頭痛、めまい、疲労感などです。
これらは、睡眠薬の持ち越し効果と言われています。集中力の低下が懸念されることから、デエビゴを服用している時は、自動車の運転、機械の操作を避けるよう注意しなければなりません。
また、悪夢などの異常な夢を見る人もいます。
副作用と思われる症状が現れた場合は、医師に相談しましょう。
デエビゴはどんな人に向いている?
不眠症の症状には、寝付きが悪い、途中や早朝に目が覚める、熟睡感がない、など様々なパターンがあります。
作用メカニズムからもデエビゴが効果を発揮するのは、寝つきが悪いという入眠困難の症状や、寝ている途中で目が覚めてしまう中途覚醒の症状がある場合です。
また、国内で行われた臨床試験によれば、レンボレキサント(デエビゴ)を服用することで、入眠潜時、中途覚醒、睡眠効率が改善するという結果も確認されているようです。
内服に注意が必要な人
デエビゴの有効成分であるレンボレキサントは、肝臓でCYP3Aと呼ばれる酵素によって代謝されて消失します。
抗生物質のエリスロマイシンおよびクラリスロマイシン、抗真菌薬のフルコナゾールおよびイトラコナゾール、カルシウム拮抗薬のベラパミルなどの薬剤は、代謝酵素のCYP3Aを強力に阻害します。
そのため、これらの薬剤を飲んでいる人が通常量のデエビゴ(レンボレキサント)を服用すると、血中濃度が著しく上昇し、副作用の症状が強く発現する危険があります。
また、肝臓に障害がある場合も注意が必要です。
必ず、医師に内服中のお薬を伝えて、内服量を相談しましょう。
デエビゴを内服する上で注意したいこと
デエビゴに限らず、睡眠薬は内服に注意が必要なお薬です。
以下を参考にされてください。
用法用量を守る
デエビゴは2.5㎎・5㎎・10㎎の錠剤があります。
増量は、成人で最大量10㎎までです。
再診時に「効かなかったのでもう一錠飲みました」と話される患者様がたまにいらっしゃいますが、お薬には有効な用量が決まっています。増量の検討は医師と相談されてください。
また、デエビゴは入眠だけでなく、中途覚醒にも効果のある作用時間の長いお薬です。中途覚醒時に追加で内服すると起床時や日中に眠気が強く残る可能性があります。
そうなると、熟睡できていないための不眠症状としての眠気なのか、副作用での眠気なのかなどの区別がつかなくなり、その後のお薬検討が難しく治療に時間が掛かります。
不眠症を早期に治すためにもお薬の用法用量は守りましょう。
飲酒はしない
基本的にどの睡眠薬も飲酒は厳禁です。デエビゴも飲酒時は服用できません。
アルコールは、中枢神経系を抑制する作用があります。
飲酒後にデエビゴを服用すると、血液中のレンボレキサントの濃度が上がり、副作用が強く発現する危険があるので、注意してください。
生活改善にも同時に取り組む
不眠症の治療は睡眠薬を飲むだけではありません。
根本的な治療は、不眠症となった原因を見つけ、それを1つ1つ取り除いていくことです。
原因は、人それぞれで精神的なストレス、生活リズムや習慣の問題など様々あるでしょう。
ただ、眠れずに辛い時に、その原因を取り除くための対処をするエネルギーがある人は少ないのが現実です。
そこで、睡眠薬を使って睡眠状態を改善し、つらさを緩和します。
睡眠薬によって症状が緩和すると少し余裕ができるかと思います。
そうしたら、不眠症の根本原因と向き合い、生活習慣の改善を意識して整えるようにしましょう。
デエビゴも他の睡眠薬も、不眠症治療のサポート役に過ぎません。
お薬からの離脱を目指すことを忘れずに治療されてください。
まとめ
以上、今回は睡眠薬のデエビゴについてお話しました。
作用メカニズムについて知っておくと、自分のその時の状況に合わなくなった時に漫然と服薬を続けなくて済みます。
今回の記事でも説明しましたが、お薬はその代謝のために少なからず肝臓など体に負担をかけます。
自分の症状に合わなくなっているな、減薬していきたいという時には、医師にご相談くださいね。
逆に、不眠症状のピークで困っているという場合は、割り切ってお薬に頼りましょう。
医師に相談することで、その時の状況でのベストな提案を受けられます。
お悩みの方は、当院はオンラインクリニックで不眠症を専門に診察しておりますので、ご相談ください。
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