睡眠障害の症状の中で、「十分な睡眠時間をとっているのに、寝た気がしない」熟眠障害と呼ばれるものがあります。
睡眠でお悩みの方の中で多いのは入眠ができないという不眠の症状ですが、中には「入眠はすぐできる上、7~8時間眠っているのに、日中も眠い」と訴えられる方もいらっしゃいます。
この場合は過眠症や睡眠時無呼吸症候群などの可能性が出てきます。
今回は、睡眠時無呼吸症候群に焦点をあてて、どうのような病気か、セルフチェックや、自分でできる対策などについてお話していきます。
睡眠時無呼吸症候群(SAS)とは
睡眠時無呼吸症候群という病名は、過去に居眠り運転での事故のニュースで有名になりました。
放っておくと、それだけ危険な病気であると言えます。
以下に症状・原因・検査・治療について述べます。
症状
睡眠時無呼吸症候群(SAS:Sleep Apnea Syndrome)は、呼吸が止まった状態になる無呼吸が、睡眠中に何度も繰り返される病気です。
そのため、睡眠が浅くなり、睡眠中に目が覚めたり、起床時に熟眠感がなくなります。
いびきや不眠、起床時の頭痛、日中の眠気などの症状もあります。
また、血管内の酸素が不足することで高血圧や心筋梗塞などの循環器系の病気や呼吸器系の病気など、重大な合併症を引き起こすこともあります。
さらに、日中の眠気によって、居眠り運転による交通事故などを起こしやすく、治療をせずに放置しておくと、生命に危険が及ぶ場合もあります。
原因
睡眠時無呼吸症候群は、多くの場合、空気の通り道である気道が、部分的あるいは完全に閉塞してしまうことにより起こります。
そのため、肥満体の人、首が短くて太い人、顎が小さい人などに多いです。もともと気道が狭い構造になっている上に、睡眠中には、咽頭の筋肉や舌が緩み、さらに気道が狭くなります。
そのような状態で息を吸うと、肺で生じた陰圧によって狭い気道がさらに狭くなって閉じてしまい、睡眠中の無呼吸が発生します。
検査
一般的には一晩入院して、いろいろな電極やセンサーなどの検査端子を身体に取り付けて眠り、睡眠状態を調べるポリソムノグラフィー(PSG)という検査を行います。
ポリソムノグラフィーでは、脳波と心電図、胸部・腹部の動き、鼻からの空気の流れ、動脈中の酸素飽和度などを連続して記録し、翌日に医師が診断します。
この検査は在宅でも行える簡易な方法もあります。
オンラインクリニックの当院でも取り入れておりますので、ご相談ください。
治療
検査で睡眠時無呼吸症候群と診断された場合は、経鼻的持続陽圧呼吸療法装置 (CPAP)治療を行うことができます。
CPAPは、一定圧を加えた空気を、鼻から送り込む込むことによって、上気道の閉塞を取り除き、睡眠中の気道を確保する治療法です。
その他の治療法としては、手術やマウスピースや生活習慣の改善などがあります。
生活習慣の改善方法については、後述の「自分でできる治し方はある?」で紹介します。
セルフチェック
いびきをかいたり、熟睡感がないなど上記の睡眠時無呼吸症候群の症状に当てはまると感じられる方は、以下のチェックをしてみてください。
睡眠時無呼吸症候群を診断する時に問診で用いられる方法の1つです。
検査は病院を受診しないと受けられませんが、こちらはご自分で睡眠時無呼吸症候群の可能性を知ることができますので、受診するかどうか決めるためにも参考にされてください。
エプワース眠気尺度(ESS)
下記の①~⑧までの状況での眠気がどの程度か点数をつけてください。
0点…決して眠くならない
1点…ときに眠くなる
2点…しばしば眠くなる
3点…眠くなることが多い
①座って読書しているとき
②テレビを見ているとき
③公の場で座って何もしないとき(観劇や会議など)
④1時間続けて車に乗せてもらっているとき
⑤状況が許す場合で、午後に横になって休息するとき
⑥座って⼈と話しているとき
⑦アルコールを飲まずに昼⾷をとった後、静かに座っているとき
⑧⾞を運転中、交通渋滞で2〜3分停⽌しているとき
5点未満→⽇中の眠気少ない
5〜10点→⽇中の軽度の眠気あり
11点以上→日中の強い眠気あり
5点未満であれば心配はないですが、5~10点であれば、まずは自分でできる対策などを試されるといいでしょう。
ただし、症状が顕著である場合は受診をおすすめします。
11点以上の場合は、受診して詳しい検査をされることをおすすめします。
自分でできる治し方はある?
睡眠時無呼吸症候群では重い病気を引き起こす可能性もあり、診断されればCPAP治療をされることが多いです。
しかし、この治療法は就寝時に鼻や口にマスクをつけて空気を送り込むため、不快で眠りづらいと訴えられる患者さんも珍しくありません。
また、検査で睡眠時無呼吸症候群の程度が低い場合はCPAPを導入できないこともあります。
そのような場合は、以下の自分でできる対策を試して改善していくことをおすすめします。
ただし、自己中断は危険ですので、CPAPの使用については医師と相談してください。
睡眠中の体位の工夫をする
仰向けで寝ると身体のすべての部分に下向きの重力が加わり、舌や咽頭の上側の筋肉や軟口蓋は、咽頭の下側と後側の壁にくっつこうとします。この状態では空気の通り道である気道は、狭くなるか完全にふさがってしまいます。
そのため、身体を横向きにしたまま寝ることで症状が良くなることがあります。
減量する
肥満などによって起こる気道の閉塞は、減量することで改善することがあります。生活習慣を見直し、体重コントロールをしましょう。
一度減量しても、体重が元に戻ると症状も元に戻ってしまいますので、減量ができた後も、その体重を維持することが大切です。
喫煙や飲酒を控える
喫煙は、血中の酸素を低下させ、咽喉頭部の炎症をおこし、睡眠中の無呼吸に悪影響を与えます。
アルコールも、咽頭の筋肉を緩め、気道の閉塞を引き起こしやすくします。脳の目覚めが悪く、身体に危険な長い無呼吸を増加させます。
また、睡眠薬や精神安定剤などでも同じく無呼吸が悪化することがあります。
しかし、このような薬剤は突然中止すると病気が悪化することがありますので、内服薬剤については担当医にご相談されてください。
まとめ
今回は睡眠時無呼吸症候群についてお話しました。
どのような病気か、受診が必要かなど参考になりましたでしょうか?
睡眠時無呼吸症候群は、他の重大な病気と切り離せない病気であるため、気になる方は早めの受診をおすすめ致します。
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