不眠やその他の睡眠障害を治療中の方で、「寝つきは良くなったけど、早く目が覚める」と訴えられることがあります。
これは早朝覚醒という症状です。
今回は早朝覚醒に焦点をあてて、その原因や、対策としてできるお薬との付き合い方や、日常の過ごし方についてお話します。
「朝方早くに目がさめて、まだ寝たいのにその後眠れない…」といったお悩みをお持ちの方は、ぜひ参考に読まれてみてください。
早朝覚醒はなぜ起こる?
早朝覚醒とは、一般に予定していた起床時間よりも2時間以上早く目覚めます。
そして、再び眠ろうとしても、眼が冴えて眠れなくなってしまうという症状です。
早朝覚醒は、生活習慣の乱れ、心的ストレス、うつ病によるもの、加齢によるもの、更年期障害によるものなど、さまざまな原因があります。
それぞれ説明していきます。
生活習慣の乱れ
早朝覚醒は、生活習慣の乱れが原因となることが多いです。
たとえば、極端な運動不足は睡眠の質が低下して、早朝覚醒につながります。
また、喫煙や飲酒も睡眠の質を悪くします。
タバコは脳を覚醒してしまい、睡眠の質を下げます。
アルコールは寝つきがよくなる印象がありますが、眠りが浅く質が悪くなり、アルコールの作用が切れると目が覚めてしまうのです。早く目が覚め、眠りの質が悪いので熟眠感も得られません。
他にも、夜勤や交代勤務で昼夜逆転の生活をしている場合などにも、早朝覚醒は起こります。
生活リズムが安定しないため、体内時計が狂ってしまうことが原因です。
心的ストレス
私たちの体は、快適な睡眠を得るためには副交感神経の働きが必要となります。
しかし、ストレスが加わると、活動時に必要な交感神経が優位に立ち、血圧や心拍数も上がり、興奮状態になります。
この状態で寝ようとしても、寝つきが悪く、眠りが浅くなるため早朝覚醒が起こります。
うつ病によるもの
うつ病による睡眠障害は多く見られます。
うつ病は、神経伝達物質の分泌異常が原因の1つとされており、うつ病になるとセロトニンの分泌が減少します。
快適な睡眠には、メラトニンという睡眠ホルモンが重要なのですが、メラトニンはセロトニンから作られます。そのため、うつ病では早朝覚醒などの睡眠障害を起こしやすいのです。
加齢によるもの
早朝覚醒は、高齢者によくみられる症状でもあります。
加齢によって、体内時計が前倒しになることが主な原因とされています。
また、高齢になると、睡眠ホルモンであるメラトニンの分泌が低下します。
そのため、浅い眠りの時間が増え、ちょっとした物音や光などの刺激で目が覚めてしまうのです。
更年期障害によるもの
更年期障害によっても、早朝覚醒などの睡眠障害が起こります。
40歳以降になると生理不順になり、更年期の症状が出現する女性が増えます。
女性ホルモンのバランスが崩れること、自律神経の乱れが生じることによって、眠りが浅くなり、何度も目が覚めるなどの不眠の症状が現れるのです。
早朝覚醒は、更年期のホットフラッシュ、抑うつ、不安などと関連していることが報告されています。
早朝覚醒の対策としてできること
では、次に早朝覚醒を改善するためにできることを説明します。
医師への相談や睡眠薬について
不眠症で治療を受けられている方は、早朝覚醒の症状などを話し、担当医とお薬の見直しの相談をするのも方法の1つです。
というのも、不眠症のお薬には作用時間や作用の仕組みなどにいくつかの種類があります。
ベンゾジアゼピン系睡眠薬、非ベンゾジアゼピン系睡眠薬、メラトニン受容体作動薬、オレキシン受容体拮抗薬など区別され、お薬一つ一つに特徴があります。
そのため、自分で気に入っている薬を飲み続けるよりも、その時の状況や症状の変化を医師に報告し、そのタイミングに合った睡眠薬を飲んだほうがより改善が早いことがあります。
睡眠薬の専門の知識を持つ医師に相談することで、上記の早朝覚醒の原因など、その方の症状の背景を考慮に入れた処方薬で治療することができるからです。
病院受診をしていない方でも、日中の活動に支障が出たり、気力が出ないなどの気分の落ち込みなどの症状がある方は、背景にうつ病なども考えられるため、早めの受診をおすすめします。
漢方薬について
漢方薬は西洋薬のように直接的に脳へ作用して睡眠を促すものではありませんが、体質改善や気分的なものへ作用することで効果を発揮してくれます。
当院は睡眠専門のオンラインクリニックのため、うつ病治療などはできませんが、不眠による軽度の気分のお悩みなどについては、漢方薬を処方することで改善が期待できるよう対応しています。
自分でできる過ごし方のアドバイス
診察中に生活習慣改善の話をすると、「不眠になる前からそれはしているので関係ない」と抵抗感を示す方がたまにいらっしゃいます。
眠れないと気分に余裕がなく頑なになりがちです。
しかし、睡眠障害はいくつかの要因が重なって起こってきます。
ですので、症状を改善するためには、色々な方向から対処することで改善できる可能性が高まります。その1つの方法が生活習慣の見直しと考えて、試しにやってみましょう。
症状が改善すればラッキーですし、さらに生活習慣の見直しは睡眠障害の根本治療であるため、成功すればお薬からの離脱も早くなります。
ぜひ、以下を試してみてください。
・寝る時間と起きる時間を決める
・起きたら、太陽の光を浴びる
・適度に運動をする
・入浴は寝る90分前までに済ませておく
・就寝前にスマホやテレビなどは見ない
・就寝前の喫煙・飲酒は控える
・就寝前の飲食は控える
・自分なりのストレス解消法を身につけておく
・日中の活動に支障がなければ早朝覚醒があっても気にし過ぎない
まとめ
以上、早朝覚醒の原因や、対策としてできるお薬との付き合い方や、日常の過ごし方についてお話しました。
早朝覚醒にはさまざまな原因がありましたが、出来ることとしては、専門医への相談と生活習慣の改善がメインとなります。
自分で対処が可能なことは積極的に取り入れましょう。
しかし、1人では解決が難しい場合は、医療機関の力を借りることも大切です。
お困りの方はご相談ください。
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