睡眠は健康維持のためにとても大切です。
しかし、日本では、一般成人の30〜40%が何らかの不眠症状を有しており、女性に多いことが知られていますさらに、不眠症状のある方のうち慢性不眠症は、成人の約10%に見られるそうです。
今回はどのような睡眠の悩みが多いのか、また、女性に不眠が多い理由についてお話します。
睡眠の悩みランキングTOP3
厚生労働省が行った令和3年度の健康実態調査では、以下の3つが多いという結果です。
①夜間、睡眠途中に目が覚めて困った
②日中、眠気を感じた
③睡眠全体の質に満足できなかった
「夜間、睡眠途中に目が覚めて困った」というのは、不眠症で中途覚醒と呼ばれる症状にあてはまる悩みです。
「日中、眠気を感じた」「睡眠全体の質に満足できなかった」という悩みも熟眠障害という症状に当てはまります。
これらは不眠症の症状にも当てはまりますが、睡眠時無呼吸症候群などのその他の睡眠障害の可能性もある悩みです。
いずれの悩みも、男性よりも女性が多いという結果でした。
不眠が女性に多い理由
女性は、睡眠だけに関わらず、ホルモンの影響を大きく受けます。
女性ホルモンの影響によって、男性よりも不眠になりやすい傾向があるのです。
以下に女性ホルモンや更年期の変化などについて説明します。
女性ホルモンとは
女性は女性ホルモンであるエストロゲンやプロゲステロンの分泌時期の変化により、心身の状態に変化が生じます。
エストロゲンは、卵胞を成熟させたり、子宮内膜を厚くする働きがあります。
この他にも、肌のツヤをよくする、血管をしなやかに保つ、骨密度を維持するなど、様々な働きがあります。
このエストロゲンの影響によって、月経後から排卵日までは、心身ともに快調に過ごせる女性が多い傾向にあります。
プロゲステロンは、子宮内膜を整える、体温を上げる、乳腺を発達させるといった体の変化を生じさせます。
その他にむくみ、食欲の増進、眠気、イライラなどのやっかいな変化ももたらします。
プロゲステロンは、排卵日から月経開始前までの期間に多く分泌され、この期間の女性は活動量が低下しがちです。
女性ホルモンによる眠気や体温が関係している?
生理前は上記のようにプロゲステロンの分泌量が多い時期であることから、眠気を感じる人が多い傾向にありますが、逆に不眠を訴える場合もあるのです。
これは体内時計のずれが原因のようです。
研究者の中には、月経の前は体内時計が後ろにずれやすくなるという説を唱える人もいます。
体内時計がずれると、眠くなる時間もその分、ずれていきます。
その結果、普段とは違う時間帯に眠気が生じるため、眠るタイミングを逃し、「眠れない」と感じるケースがあるようです。
また、プロゲステロンによる体温の上昇が快眠を妨げ、眠りにくくしていることもあるようです。
更年期の不眠
女性ホルモンと睡眠のかかわりでいえば、女性ホルモンの分泌量が大きく低下する更年期にも不眠に悩まされることが多々あります。
原因は主に、女性ホルモンの分泌量低下による自律神経の乱れと考えられます。
更年期になるとエストロゲンの分泌量低下は著しく、ホルモン分泌の指令を出す脳の視床下部から「エストロゲンを分泌させて」という指令を受けても、出せるエストロゲンがないという状況になります。すると自律神経系の司令塔でもある視床下部も影響を受け、自律神経のコントロールがうまくいかなくなります。
そうなるとホットフラッシュなどがおき、夜間何度も起きて熟睡できない、動悸や不安が起こるなどの不眠の原因となります。
女性の不眠への対策
女性ホルモンの分泌をつかさどる脳の視床下部という部分は、心身両面のストレス反応にかかわる中枢でもあります。
そのため、ストレスケアがうまくいかないと不調の度合いも重くなってしまいます。
できるだけリラックスして過ごし、ストレスによる女性ホルモンの乱れや不眠を防ぎましょう。
自分を責めない
月経前に不眠だけではなく様々な不調が生じると、イライラが募りやすい時期であることも影響して、自己嫌悪に陥ったりすることがあるかもしれません。
しかし、月経前に不調が生じるということはプロゲステロンが優位になっていてホルモンの分泌が順調な証拠でもあります。「調子が悪くて当然」な時期と受け止め、不必要に落ち込まずに過ごしましょう。
また、更年期も同様に、不眠や体調不良を抱えて当然の時期です。加えて、子どもの自立や親の介護など、自分以外の問題も同時に抱えることが多々あります。
悩みは一人で抱え込まず、家族や周囲の人に相談するなど、少しでも軽減させていくことをおすすめします。
女性の不眠に漢方薬を取り入れる
当院を受診される患者様の中にも、「月経周期に影響を受けている気がする」と話される方も多いです。
女性の不眠症状に対して、当院では、漢方薬を処方することで対応しています。
中には睡眠薬を使わずに漢方薬だけで改善する方もいらっしゃいます。
お困りの方は一度ご相談ください。
まとめ
以上、睡眠のお悩みの中でどのような悩みが多いのか、女性の不眠や対策についてお話しました。
病院受診をためらい、不眠の悩みを1人で抱えていらっしゃる方も多いようです。
しかし、日本では同じような睡眠の悩みを持つ人がとても多いということを知って頂けたでしょうか?
不眠の悩みは珍しいことではありません。
ぜひ、早めの病院受診をして早期回復を目指しましょう。
直接通院するのをためらう方は、当院ではオンラインで不眠症の診療をしておりますのでご相談ください。
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