不眠で受診される患者さんの中には、もともと睡眠が得意ではなかった方が、さらに状態が悪化したので受診したという方もいらっしゃれば、急に眠れなくなって受診する方もいらっしゃいます。
後者の方は「どうして私が眠れなくなったのか…」と疑問を口にされることもあります。
当院では、不眠のお悩みに対して、お薬やサプリンメントの提案、また、眠りのコツなどをお伝えして治療しております。
しかし、患者さん自身が「どうして眠れなくなったのか」という原因を知ることができれば、その原因をより早く取り除くことができ、不眠症が治るのも早くなります。
今回は、不眠症の原因について解説しますので、不眠症治療にお役立てください。
不眠症の原因
なかなか寝つけない、夜中に何度も目を覚ます、朝早く目が覚め、再び眠りに戻ることが難しいなどが不眠の特徴です。
眠りに伴う休息感が薄れ、活力や気分だけでなく、健康、仕事の効率、生活の質が損なわれてしまいます。
ここでは、このような症状を特徴とする睡眠障害の中の1つの病気である不眠症について、原因を解説していきます。
体の病気
高血圧や心臓病(胸苦しさ)・呼吸器疾患(咳・発作)・腎臓病・前立腺肥大(頻尿)・糖尿病・関節リウマチ(痛み)・アレルギー疾患(かゆみ)・脳出血や脳梗塞など、体の病気があると不眠が生じることがあります。
また、睡眠時無呼吸症候群やムズムズ脚症候群(レストレスレッグス症候群)などは、睡眠障害の中に分類されていますが、これらは睡眠に伴って、呼吸異常や四肢の異常運動が出現します。そのために睡眠が妨げられ不眠になっていることも珍しくありません。
このような場合には、不眠そのものより背後にある病気の治療が先決です。体の病気の原因を治療することで、不眠の症状も消失するからです。
心の病気
心の病気は不眠を伴うことが多いです。近年は、うつ病にかかる人が増えています。不眠だと思っていたら、実はうつ病だったというケースも少なくありません。
多くの人が「不眠を早く治したい」「睡眠薬なしで眠れるようになりたい」との希望を持っているはずですが、不眠の症状だけに注目し過ぎていると、日中の活動に支障がなければ漫然と睡眠薬を飲み続けてしまうことも少なくありません。
もしも、朝は無気力で夕方にかけて元気がでてくるといった日内変動の症状などがある場合は、心療内科や精神科で心のケアも視野に入れて治療してみることを検討してみてください。
ストレス
ストレスと緊張は、やすらかな眠りを妨げます。真面目な性格の人は、ストレスをより強く感じ、不眠症になりやすいともいわれています。しかし、診療中、お話を聞いていると真面目であるがゆえにストレスをストレスと捉えていない人も多い印象です。
不眠のきっかけとしてストレスなどがないか確認すると、「忙しいし、人間関係も大変ですが、それは以前からですので特別何かがあったわけではないです」といったような返答があります。人間は機械ではないので、ON・OFFとスイッチを押すように症状が出たり消えたりはしません。長期間のストレスに耐え切れなくなり、体が悲鳴をあげた結果が不眠の症状ということもあります。
不眠の原因となっている改善を考慮した方がいいストレスがないか、ゆっくりご自分を見つめてみてください。
薬や刺激物
コーヒー・紅茶などに含まれるカフェイン、たばこに含まれるニコチンなどには、覚醒作用があり、安眠を妨げます。カフェインには、利尿作用もあるためトイレ覚醒も増えます。
また、睡眠を妨げる薬としては、降圧剤・甲状腺製剤・抗がん剤・抗うつ剤などが挙げられます。
しかし、これらの薬は自己判断で中止せず、医師とご相談ください。
生活リズムの乱れ
交替制勤務や時差などによって、体内リズムが乱れると不眠を招きます。
現代は、24時間稼働する体制の職種も増えており、さらにコロナの影響により在宅勤務も増えました。
早寝早起きをして外出するという生活パターンがなくなると、日光を浴びる機会も減り、体内時計が働きづらく、生活のリズムが崩れてしまいがちです。
環境
住環境によっては、近所で行われている工事の騒音や光、近所や家族の生活音やいびきなどが気になって眠れないといったケースもあります。
また、寝室の温度や湿度が適切でないと、安眠できません。
不眠恐怖の悪循環
不眠症になる直接的な原因ではないですが、不眠症が続く原因として、不眠になってしまったことが、さらに不眠を招いているということもあります。
眠れない日が続くと「また今夜も眠れないのではないか」と不安になり、不眠が続くうちに寝床に向かうだけで緊張してしまい、さらに眠れなくなるのです。
実際に「眠れないのに我慢して無理に寝床にいる」と不眠が悪化することが分かっています。
原因があることをプラスに受け止めましょう
不眠症になると、身体的な疲労もあり、さらに心理的なストレスや気分の不調により滅入ることが多いですよね。
しかし、原因がないわけではないのです。
原因が分からなければ、治療の方法すらわかりませんが、原因があれば治療方法が見つかります。
原因があるということを、自分を責める材料にしてしまうのではなく、改善のために「出来る事があるのか!」とプラスに受け止めることで治療に向き合いやすくなります。
この記事を不眠症治療に役立てて頂ければ嬉しいです。
まとめ
以上、不眠症の原因に焦点を当てて、解説してみました。
ご自身の不眠の原因として、当てはまるものはございましたか?
不眠症の原因は、上記に述べたもののうち、どれか1つが原因というのではなく、複数あり、それらが絡み合って症状が悪化していることも多いです。
心当たりがあるものを1つずつ取り除いていくことで、不眠症の治癒につながります。
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